国際会議(分科会)
本会議のテーマと並行し開催する分科会は、5つのセッションを開催します。国内の文化施設や中間組織等の実践者やアーティストによる活動報告を中心に、今後の展望をディスカッションすることで、各セッションテーマにおける芸術文化領域でのアクションと未来に向けた展望を共有します。
開催期間・会場
- 会期:
- 2022年7月3日(日)〜7月4日(月)
- 会場:
- 東京都美術館 アートスタディルーム
※各会場には一般来場者用の駐車場はありませんので、ご注意ください。
※車椅子をご使用のお客様のための駐車場があります、要予約制のためご利用の方は「だれもが文化でつながる国際会議」事務局まで事前にご連絡ください。
※車椅子席をご用意しています。スペースに限りがあるためご利用のお客様は事務局までお問い合わせください。
参加費
無料
情報保障支援
手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供 ほか
※上記のほか、情報保障に関するご要望がございましたらお問合せください。
定員
各回30名(先着順)
セッション
B-1 分科会
7月3日(日曜日)10時30分〜12時30分
セッション1
ミュージアムが健康を作る場に–超高齢社会の中での「社会的処方」
「社会的処方」とは、いわゆる薬の「処方箋」ではなく社会的な繋がりを生む「処方箋」という意味が込められた新しい用語です。心身の不調を感じている人が、健康の改善につながる方法を地域の活動などに参加することを通して見出すことができるように、医師や保健医療専門職がリンクワーカー(患者と社会資源とをつなぐ役割の人)を紹介する仕組みです。そこで社会的なつながりを共に作り出す、社会的参加の場としてミュージアムの役割が注目されています。本セッションでは、台湾における「博物館処方箋」の取り組みと、東京都美術館における高齢者や認知症の方とその家族に向けた取り組みを紹介し、超高齢社会の中でのミュージアムの新しい可能性やそこでの課題について検討します。
参考URL https://www.zuttobi.com
登壇者
藤岡勇人(東京都美術館アート・コミュニケーション係学芸員Creative Ageing ずっとび担当)
ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校修士課程修了。文化理論とキュレーションを専攻。2018年から東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻の特任助教を務め、研究者、キュレーター、映像作家として幅広く文化事業に従事。主な展覧会企画に「On the Verge of Fiction」(關渡美術館(台北)、19年)など。21年から東京都美術館のアート・コミュニケーション係で高齢者を対象にした事業「Creative Ageing ずっとび」を担当し、ミュージアムでの社会的処方についての調査および、異世代交流や認知症当事者とその家族を対象にしたプログラムの企画などを行っている。
Creative Ageing ずっとび特設サイト
邱君妮 チョウ・チュンニ(東京文化財研究所文化遺産国際協力センターアソシエイトフェロー/博物館学(学術博士))
総合研究大学院大学・文化科学研究科にて(大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立民族学博物館 比較文化学専攻)博士課程修了。多様化し、複雑化する社会のなかで、博物館が異なる文化間の対話を実現させるための方法論を見出すため、博物館における民主化や脱植民地化など博物館運営改革及び文化的市民権の実現を中心に、包摂的かつ協働的な博物館活動に関する研究を行う。12年からICOM(国際博物館会議)活動を通じて国際交流に従事。ICOM-CAMOC(都市博物館国際委員会)理事、ICOM規定及び内部規程の見直しに関するワーキンググループ・メンバー。ICOM京都大会準備室研究員を経て、2021年9月より現職。
リン・チエチー(国立台湾歴史博物館公共サービス・教育担当キュレーター)
イェール大学建築学部で環境デザインの修士号を取得後、ニューヨーク大学で博物館学を専攻。2016年より国立台湾歴史博物館に所属し、展示と博物館教育を担当している。近年は、文化的アクセシビリティ、平等な機会と、社会的包摂の推進に取り組んでいる。より多くの人々が博物館のリソースを有効活用できるよう、身体不自由や精神障害のある人々を対象とする支援センターや高齢者介護に従事する団体との協働に意欲を注いでいる。
稲庭彩和子(独立行政法人国立美術館本部主任研究員)
青山学院大学(修士)、ロンドン大学UCL大学院(修士)。神奈川県立近代美術館を経て、東京都美術館のアート・コミュニケーション事業の新規立ち上げを担当。社会課題を視野に入れ、市民と協働する「とびらプロジェクト」や「MuseumStartあいうえの」、超高齢社会に対応する「Creative Ageing ずっとび」などを企画運営。2022年4月より現職。展覧会として「キュッパのびじゅつかん」展(15年)等担当。主著として『美術館と大学と市民が作るソーシャルデザインプロジェクト』(18年、青幻舎)、『コウペンちゃんとまなぶ世界の名画』(21年、KADOKAWA)、『こどもと大人のミュージアム思考』(22年、左右社)等。
情報保障支援
中日逐次通訳、手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供
B-2 分科会
7月3日(日曜日)13時15分〜14時45分
セッション2
オンラインでつながることは、新しい居場所となるか?
新型コロナウィルス感染症拡大防止において、外出制限などにより人との交流や出会いが制限され、学校等の教育現場では美術館などへ出かける校外学習が中止されるなど、これまで訪れていた場所に行けなくなるという事態が生じました。そうした状況を打開すべく注目され、急速に普及した取り組みのひとつにオンラインによる体験があります。本セッションでは、オンラインを活用した美術館と学校連携授業の取り組み、共同体験の場を創出するデジタルメディア、サードプレイスとしての美術館の意味を紹介し、そもそもオンラインでつながることは、新しい居場所となるのかについて考えます。
登壇者
佐々木遊太(デジタルメディア・アーティスト)
終電を逃して宿泊したサウナで、背景の異なる人々が、同じテレビを見て共に笑っている状況に遭遇し、ピントが明確になる。以降、オンライン・オフラインを問わず、多様な背景が混在する「状況」を制作してきた。こうした制作活動を起点に、科学館における展示企画開発や、大学の情報系・芸術系部局における研究員などを経て、現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)で映像関連の業務に従事しながら、東京大学大学院新領域創成科学研究科で非常勤講師をしている。CREATIVE HACK AWARD 2016グランプリ、第15回・第19回・第25回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品など。
https://sasaki-sasaki.com/
吉水由美子(マーケティングクリエイティブディレクター、消費者のライフスタイルや価値観のリサーチャ―)
(株)日本デザインセンターで広告制作、(株)アサツーディ・ケイなど広告代理店でマーケティング戦略開発に携わった後、2000年より約20年間伊藤忠ファッションシステム(株)で消費者のライフスタイルや価値観を研究し、その成果を書籍や講演にて発表。21年、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了(社会デザイン学修士)。人々のサードプレイスとしての美術館の可能性をテーマに、修士論文や日本文化政策学会誌に研究ノートを執筆。並行して東京都美術館と東京藝術大学のソーシャルデザインプロジェクトである「とびらプロジェクト」に参加、実践に取り組んでいる。
郷泰典(東京都現代美術館学芸員(教育普及係長))
1998年よりフリーランスのワークショップ・プランナーとして、日常生活におけるアート体験や作品と鑑賞者をつなぐため、主にこどもを対象としたワークショップ・プログラムを企画し、全国各地の美術館、学校、社会教育施設、病院、商店街などで実施。2007年より現職。東京都現代美術館では、学校団体鑑賞、ギャラリークルーズ、ワークショップ、MOT美術館講座などを企画担当。
情報保障支援
手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供
B-3 分科会
7月3日(日曜日)15時15分〜17時15分
セッション3
地域における多文化共生を考える ─文化施設・アーティスト・国際交流協会の視点から─
東京都では、2040年には在住外国人が125万人、10人に一人と予測されています。各自治体や国際交流協会などによる外国にルーツをもつ人々に向けた支援や取り組みが広がる中、文化施設においても、地域のさまざまな主体と連携をとりながら、地域社会の多文化共生を担う場となることを目指した活動が始まっています。本セッションでは、文化施設の活動やアーティストによる実践を中心に、地域・コミュニティのつながりを、事業に携わるそれぞれの立場の視点から語り合うとともに、課題、可能性を探求します。
登壇者
平野智子(一般財団法人港区国際交流協会)
2012年に入職。港区委託事業「地域で育む日本語学習支援プロジェクト」に従事。生活者としての外国人の日本語学習支援、外国人の地域参画に向けた受け入れ環境の整備、「やさしい日本語」を通じた交流の推進に取り組む。同プロジェクトにおいて、東京都庭園美術館との連携によるプログラムを実施したことをきっかけに、アートによる多文化共生の場づくりに関心を持つ。一般財団法人自治体国際化協会認定多文化共生マネージャー。
一般財団法人港区国際交流協会公式サイト
高尾戸美(多摩六都科学館特別研究員・多文化共生コーディネーター)
大学時代に札幌市豊平川さけ科学館のボランティアとして運営に携わるなかで、市民の学びの場としての博物館に興味を持つ。国立科学博物館の勤務後、国内外における博物館の調査、博物館・展示づくりのプロジェクトに従事しつつ、2011年からワークショップデザイナーとして全国の博物館と利用者をつなぐプログラムを展開。17年より多摩六都科学館に所属し、19年に同館の多文化共生推進プロジェクトを立ち上げる。22年6月より現職。地域だけでなく博物館界全体の多文化共生の推進を目指している。
多摩六都科学館公式サイト
琴仙姫 クム・ソニ(アーティスト)
東京生まれ。2005年カリフォルニア芸術大学映像科修士課程修了。2011年東京芸術大学先端芸術表現領域美術博士課程修了。映像、インスタレーション、パフォーマンスなどを中心に、アメリカ、ブラジル、フィリピン、デンマーク、中国、ドイツ、ミャンマー、キューバ、日本、韓国などで作品を発表。2019年度 川村文化芸術振興財団「ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成」を受け、日本に住む脱北者とアーティストとの共同プロジェクト「朝露」プロジェクトを推進。
http://www.sonikum.com
大谷郁(東京都庭園美術館学芸員(教育普及担当))
東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。2015年〜20年に東京藝術大学美術学部特任助手として、東京都美術館との連携事業「とびらプロジェクト」のプログラム・コーディネータに従事。美術館での共同的な学びの場づくりに関心を持ち、20年4月より現職。学校との連携の他、障害のある方や乳幼児と家族など、様々な対象に向けた鑑賞プログラムの企画などに取り組む。2021年より多文化共生事業として「やさしい日本語」によるワークショップを実施している。
情報保障支援
手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供
B-4 分科会
7月4日(月曜日)10時30分〜12時30分
セッション4
テクノロジーが切り拓く、新しい音楽表現方法と楽器演奏の未来―
表現のアクセシビリティをめぐって
表現者の身体特性やアイデンティティ、言語、または社会背景を越えて、だれもが等しく自由に表現主体になれる世界では、どんなライブパフォーマンスに出会えるでしょうか。セッション4が注目するのは、「音楽」を中心にしたインクルーシブな創造活動です。だれもが表現者になるための触媒ツール(=楽器)の開発の最前線から、先端技術が生み出す新しい音楽表現方法、そして楽器演奏の未来に迫ります。
登壇者
新井鷗子(横浜みなとみらいホール館長)
東京藝術大学音楽学部楽理科および作曲科卒業。NHK教育番組の構成で国際エミー賞入選。これまでに「題名のない音楽会」「東急ジルベスターコンサート」等の番組やコンサートの構成を数多く担当。東京藝大 COI拠点インクルーシブアーツ研究プロデューサーを務め、1本指で弾ける「だれでもピアノ®︎」の開発に携わった。著書に『おはなしクラシック』(2015年、アルテスパブリッシング)、『音楽家ものがたり』(20年、音楽之友社)等。東京藝術大学および洗足学園音楽大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター先端アートデザイン分野アドバイザーを兼任。
横浜みなとみらいホール公式サイト
アンドレアス・シアギャン(アーティスト、エンジニア)
インドネシアのジョグジャカルタを拠点に活動。DIY電子工学、分野横断的なアート活動を展開する。2012年に芸術と科学、テクノロジーの市民イニシァティブ「Lifepatch(ライフパッチ)」を共同で設立。14年にはHackteriaとLifepatchで共催したHackterialabの共同ディレクションを担った。13年にインドネシア・ジョグジャカルタで、15年にオーストラリア・メルボルンのビクトリア国立美術館で開催された、音や楽器に焦点をあてたコラボレーション・プロジェクト「The Instrument Builders Project」に参加。18年には、「BioCamp: Gardens as ‘Biotechnik’」協働ディレクター、Indonesia Netaudio Festival芸術監督、Hacklab Nusasonic協働ホスト、「Arisan Tenggara」ファシリテーターを務める。19年にドイツ・ベルリンにて「MusicMakers Hacklab - CTM Festival」を共催し、「Yogyakarta Cultural Festival」にてコンテンポラリー・オーディオビジュアル・パフォーマンスのキュレーションを担当。近年は独自の楽器を創作し、自身のウェブサイト「instrumentasia」にて公開している。
https://instrumentasia.net
中西宣人(フェリス女学院大学准教授、株式会社A-KAK取締役、楽器デザイナー、サウンドデザイナー)
多様な奏法に対応する音楽インタフェースやデジタル楽器の開発と研究に従事。「The Cell Music Gear」、「B.O.M.B.」、「POWDER BOX」など開発したデジタル楽器で、電子工作コンテスト優秀賞(2011年)、Asia Digital Art Award 優秀賞(14年)、Laval Virtual ReVolution“Residence”(14年)などを受賞・選出。また、これらの楽器を用いた演奏活動も国内外で行い、千代田芸術祭2014にて岸野雄一賞、Georgia Tech’s Margaret Guthman Musical Instrument Competition 2017ファイナリストなど入選歴多数。センサー開発企業や教育機関とのデジタル楽器の共同開発や国内外の演奏活動など、音と音楽を中心に多角的に活動している。
https://yoshihito-nakanishi.com
杉山幸代(東京文化会館事業企画課事業係主任/アートマネジメント、学習環境デザイン)
文化庁在外研修制度にてロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ修士課程修了、青山学院大学大学院社会情報学研究科修了(修了時にイノベーション論文賞)。渡英中の経験から、芸術文化と社会(暮らし)、文化資本、人の学びのプロセス、セクターを越えた協働による社会イノベーション等に関心を抱くようになる。2019年に入職後、社会包摂につながる事業「コンビビアル・プロジェクト」を牽引し、東京文化会館リラックス・パフォーマンスなどを制作・実施。
コンビビアル・プロジェクト公式サイト
情報保障支援
日英逐次通訳、手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供
B-5 分科会
7月4日(月曜日)13時15分〜14時45分
セッション5
情報保障から新たな鑑賞体験のデザインへ
触察ツール、手話通訳付ギャラリートーク、センサリーマップ、体感音響システム、ポータブル字幕機サービス…。今、文化施設では、さまざまな来館者へ向けた取り組みが実装されています。分科会を締めるセッション5では、文化施設のアクセシビリティプログラムとリードユーザーの視点を掛け合わせることで、情報保障支援としてだけでなく、新しい芸術体験デザインへの未来について語り合います。
登壇者
鈴木みどり(東京国立博物館学芸企画部博物館教育課長/博物館教育)
1999年、東京国立博物館で研究員として着任。「盲学校のためのスクールプログラム」では、プログラム開発、教材開発、ボランティア研修を1年間かけて行い、2011年度から本格的に開始した。以来、博物館での社会的包摂に関心を持ち、取り組む。今年度は東京国立博物館の150周年事業の一環で「センサリーマップ」の制作や、職員の意識共有ためのプロジェクトなどを行う。2022年4月より現職。
https://www.tnm.jp/
半田こづえ(明治学院大学非常勤講師/博士(芸術学))
国際基督教大学卒業。在学中に訪れたアメリカの美術館で彫刻に触れて鑑賞したことをきっかけに美術に関心を寄せるようになる。1987年から88年まで、フィラデルフィア美術館教育部The Office of Accessible Programs にてインターンとして研修を受ける。筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程単位取得退学。筑波大学人間系障害科学域助教を経て、現職。主な研究テーマは触れる芸術鑑賞、ミュージアム・アクセシビリティ。
廣川麻子(特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)理事長)
1994年、和光大学在学中に(社福)トット基金日本ろう者劇団入団。2009年英国Graeae Theatre Companyにて研修。12年シアター・アクセシビリティ・ネットワーク設立。平成27年度(第66回)芸術選奨文部科学大臣新人賞、2016年第14回読売福祉文化賞(一般部門)を受賞。文化庁文化審議会第15期文化政策部会舞台芸術ワーキンググループ専門委員。文化庁障害者文化芸術活動推進有識者会議構成員、日本財団「True Colors Festival–超ダイバーシティ芸術祭- 」アドバイザリーパネルほか。18年より東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野ユーザーリサーチャーとして観劇支援を研究。
https://ta-net.org/
萩原彩子(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター助教/情報保障、障害学生支援、舞台手話通訳)
2006年度から筑波技術大学に勤務。手話通訳士としても活動。日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局として、高等教育機関で学ぶ聴覚障害学生への支援についての研究支援活動を行っている。もともと舞台演劇が好きだったが、ある日文楽の手話通訳を担当し、その難しさを痛感したことから、舞台芸術分野における手話通訳に関心を持ち始めた。その後、16年度から舞台演劇における手話通訳に関する研究を始め、海外における舞台手話通訳視察や日本における舞台手話通訳の分析研究等を行っている。
情報保障支援
手話通訳(日本語-日本手話言語)、文字情報支援(UDトーク)、事前資料提供