セッション
芸術文化にかかわる活動を行う実践者と研究者や、アーティストが登壇者となり、実例や経験を共有し、その背景にある理念を語り合う「セッション」。多様な実践例を知ることで、それぞれの現場で役立つヒントや気づきを得る機会となることを目的としています。
※定員あり、要予約。
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開会式・オープニングセッション 「生活圏」とアート
2025年のテーマ「居場所とわたし」を考える起点として、「生活圏」において、アートはいかに活用され、またどのように作用しているのかを議論します。人々の記憶や場の歴史を取り込んで作品を制作するコミュニティ・アートをベースに、異なるアプローチで世界と向き合う二人のアーティストと、理論と実践の両面を備えた社会学者の視点から、アートがつくる居場所について広く語り合います。
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小泉元宏
社会学者、文化政策研究者立教大学社会学部教授。2000年代に国際基督教大学で音楽・美術を、2010年代に東京藝術大学大学院で社会学・文化研究・メディア研究を学ぶ。東京藝術大学、ロンドン芸術大学、大阪大学、ロンドン大学、鳥取大学などでの研究・教育職を経て現職。専門は芸術社会学・文化政策研究。都市・地域社会におけるアートや現代文化実践を対象に、芸術と社会の関係や文化政策のあり方を理論と実践の両面から研究している。 -
中﨑 透
美術家看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せず制作を展開している。展覧会多数。2006年末より「Nadegata Instant Party」を結成。2007年末より「遊戯室(中﨑透+遠藤水城)」を設立(〜21年)。2011年より「プロジェクト FUKUSHIMA!」に参加、主に美術部門のディレクションを担当。2022年に「中﨑透 フィクション・トラベラー」を水戸芸術館現代美術ギャラリーで展示。2023年に第73回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。 -
宮永愛子
美術家東京藝術大学大学院修了。日用品をナフタリンでかたどったオブジェや、塩、陶器の貫入音や葉脈を使ったインスタレーションなど、気配の痕跡を用いて時間を視覚化し、「変わりながらも存在し続ける世界」を表現した作品で注目を集める。主な近年の展覧会に、「宮永愛子 詩を包む」(富山市ガラス美術館、2023年)、「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」(森美術館、2023年)など。 -
森 司
アーツカウンシル東京 事業調整課長2009年よりNPOと協働する「東京アートポイント計画」をディレクションし、現在は、東京都・区市町村連携事業を所管する。東京2020公認文化オリンピアード事業「東京キャラバン」「TURN(ターン)」を担当。ろう者と聴者が遭遇する舞台作品《黙るな 動け 呼吸しろ》の事務局長。「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」事業の一環として開催する本会議の企画、統括を務める。女子美術大学特別招聘教授、多摩美術大学非常勤講師。
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セッション1 文化的なケアの実践
人が心地よく生きるために、文化としての「ケア」が注目されています。動物園や水族館での生き物とのふれあいをケアと捉える視点、医療福祉ケアとアートの新たな試み、福祉現場と芸術文化をつなぐケアの実践を通して、共生社会におけるケアのあり方について話し合います。ケアする側・される側という一方的な立ち位置ではなく、また専門家のみに頼るのではなく、社会全体で担う双方向の営みを実践者とともに追求します。
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天野未知
東京動物園協会 教育普及センター 所長東北大学で海洋生物を学んだのち、葛西臨海水族園に就職。都立動物園・水族園で生きものや生きもののくらす自然環境の魅力や尊さを「伝える活動」に携わる。現在、上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園の4つの園の教育普及活動を統括、サポートするポジションで、来園する多様な方々一人ひとりに楽しい学びを提供するために奮闘中。趣味は里山歩きや素潜りでの生きもの観察。 -
唐川恵美子
文化環境設計士「ほっちのロッヂ」文化環境設計士。東京外国語大学ドイツ語学科および同大学院修士課程を修了後、東京都内・福井県内の公共ホールにて事業企画運営に携わる。2017年より地域のなかでアートが根づく「アーティスト・イン・ばあちゃんち」主宰。2020年、長野県軽井沢町にオープンした「診療所と大きな台所のあるところ ほっちのロッヂ」へ参画し、医療福祉ケアを担うスタッフやアーティストともに作品制作、地域活動を展開している。 -
田中真実
STスポット横浜 事務局長・副理事長東京工業大学大学院社会理工学研究科修了。2008年より「STスポット横浜」に入職。文化施設や芸術団体と学校現場をつなぐ横浜市芸術文化教育プラットフォーム事務局、地域文化をサポートするヨコハマアートサイト事務局の運営を行政と協働で行う。2020年より神奈川県と協働し、福祉現場と芸術文化をつなぐ神奈川県障がい者芸術文化活動支援センターを運営。「アートNPOリンク」スタッフ、「アクションポート横浜」理事。
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セッション2 アートの気配がある居場所
アーティストが「場づくり」にかかわることでもたらされる「アートの気配」。この「アートの気配」が人々の心を動かし、交流を生み、豊かな居場所づくりへのきっかけになることがあります。それぞれ異なる立場からアートプロジェクトを企画してきた二人のディレクターと、主に依存症の方々の支援に携わるソーシャルワーカーであり、場を運営する立場から、福祉や医療などの現場におけるアートの存在の大切さを提案します。
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青木 彬
藝とディレクター、社会福祉士首都大学東京インダストリアルアートコース卒業。アートを「よりよく生きるための術」と捉え、アーティストや企業、自治体と協働してさまざまなアートプロジェクトを企画している。これまでの主な活動に「ファンタジア!ファンタジア!─生き方がかたちになったまち─」ディレクター(墨田区、2018年~)など。著書に『幻肢痛日記』(河出書房新社、2024年)、共著に『素が出るワークショップ』(学芸出版社、2020年)。 -
松浦千恵
ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)2004年頃より「バザールカフェ」にかかわるようになり、現在は事務局スタッフ。依存症専門の精神科クリニックと「バザールカフェ」で主に依存症の方に向き合っている。支援という文脈において、人と人がつながったり、人を受け入れていくバザールカフェの「場」の価値をあらためて感じている。共著に『バザールカフェ ばらばらだけど共に生きる場をつくる』(学芸出版社、2024年)。 -
富塚絵美
アートディレクター文化企画を通じて、芸術との多様なかかわり方を提案するアートディレクター。2008年より東京都台東区谷中で文化創造拠点をつくるアートプロジェクトを開始。2018年より盲ろう者との交流プロジェクト、2019〜25年は京都市京セラ美術館でラーニングを担当し、2019年より東京藝術大学のキャリア支援教員、2022年より福祉施設を拠点とした「TURN LAND(ターン ランド)プログラム」のディレクターを務める。
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セッション3 更新された美術館の役割
美術館におけるインクルーシブ・プログラムは、障害の有無、年齢や国籍を超え、だれもが安心してアートと出会える場所になることをめざしています。それは、ICOM(国際博物館会議)の新しい博物館定義に記された、美術館・博物館が外へひらいていくための活動でもあります。垣根のないコミュニケーションの場を実現してきた二人の学芸員と、都立文化施設の社会共生担当統括とともに、更新された美術館の役割と可能性を探ります。
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大政 愛
はじまりの美術館 学芸員筑波大学芸術専門学群卒業。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。2016年より現職。アートとコミュニケーション、居場所づくりを活動の軸とし、はじまりの美術館では主に展覧会の企画運営、広報、相談業務などを担当。これまで企画した展覧会に「あなたが感じていることと、わたしが感じていることは、ちがうかもしれない」(2017年)、「ぐるぐるまわってみる」(2025年)など。アートミーツケア学会理事。 -
木内真由美
長野県伊那文化会館 学芸主幹2004年4月より長野県信濃美術館学芸員。長野県伊那文化会館、長野県立美術館を経て、2023年4月より現職。展覧会を担当するとともに、美術館の利用に障壁を感じる人たちに向けて、美術館をより身近に感じ、アートと出会える事業も積極的に行ってきた。2021年にオープンした長野県立美術館の建設にあたり、インクルーシブ・プロジェクトの骨格づくりや、「アートラボ」(五感で楽しむ実験的展示室)の設置にかかわった。 -
駒井由理子
アーツカウンシル東京 事業調整担当課長現在、都立文化施設のアクセシビリティ向上と各施設の社会共生担当の取りまとめに携わる。2023年まで神奈川県の文化施設に勤務。2016年の障害のある方々の4つの大会の担当をきっかけに文化施設のアクセシビリティ向上に取り組む。2021年にアクセシビリティ向上と教育普及、併せて神奈川県域での「共生共創事業」を担う。部署の立ち上げにかかわり、以降「芸術文化を社会にひらく」事業に従事し、2024年より現職。
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セッション4 居場所の見つけ方
身体を動かす、音を発するという初源を見つめた表現を軸に活動を行ってきたアーティスト。このようなアートの活動は、参加者の属性を無化し、ゆるやかでやわらかい「居場所」を生み出します。経験豊富な二人のアーティストの活動に刺激を受けつつ、多彩な顔をもち地域文化を創造してきたモデレーターとともに、あそびたのしむことを通じた、心地よい「居場所」の見つけ方について考えます。
※14時30分~15時20分 谷川俊太郎+谷川賢作+ロバの音楽座「ことばとあそぶ おととあそぶ」
セッションに先立ち、東京都の芸術文化活動支援事業「アートにエールを!東京プロジェクト」に採択され、自由学園明日館で2020年12月に開催されたコンサートのアーカイブ映像を講堂で上映します。-
砂連尾 理
ダンサー、振付家1991年に、寺田みさことダンスユニットを結成。近年はソロ活動を中心に高齢者との「とつとつダンス」などアートと社会をつなぎ、ダンスの意味を拡張する活動を展開。また濱口竜介、山城知佳子の映像作品に振付・出演や、水戸芸術館、山形ビエンナーレ2022・2024に招聘作家として参加。著書に『老人ホームで生まれた〈とつとつダンス〉――ダンスのような、介護のような』(晶文社、2016年)。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。 -
松本雅隆
ロバの音楽座 主宰1973年より中世・ルネサンスの古楽器を演奏する「カテリーナ古楽合奏団」、1982年より音と遊びの世界を繰り広げる「ロバの音楽座」、長年、森のなかで自然の音楽を体験する「ロバの学校」を主宰。1998年に「ジグの空想音楽会」が東京都優秀児童演劇選定優秀賞、2009年に「ロバの音楽座」が第3回キッズデザイン賞・創造教育デザイン部門で金賞を受賞。世界を回り古楽器の研究をするとともに、未来に向け数々の空想楽器を考案・制作している。 -
齋藤紘良
作曲家、しぜんの国保育園 理事長専門はこどもが育ち暮らし老いて死んで次に向かうための環境や文化を考えること。保育施設の運営、東京都町田市の里山地域で500年間続く祭りの創造、寺院の再興、映像番組などへの楽曲提供などを行っている。全国私立保育連盟研究企画委員、大妻女子大学非常勤講師、簗田寺副住職。著書に『すべて、こども中心。しぜんの国保育園から知る、こどもの主体性を大切にしながら家族が豊かに暮らす方法』(カドカワ、2020年)。
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セッション5 世界と対話するための身体
ろう者や盲ろう者の身体感覚に基づき、世界と対話することについて考えます。登壇者それぞれの、盲ろう児の子育てを通し、盲ろう者の社会参加を探求してきた経験、視覚的なコミュニケ―ションを重視した設計の家づくりは、先例によらず、自らの身体感覚を頼りに成し遂げられたものです。多様な身体感覚をもつ人々が、アイデンティティを確立し自らの力で社会と向き合う可能性を、美術教育の専門家とともに読み解きます。
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田畑真由美
当事者支援、手話通訳士、社会福祉士大学卒業後、証券会社勤務。こどもが難病に起因する盲ろう障害を負って生まれてきたのを機に退職。命をつなぐことに必死だった時期を経て、盲ろうの子の言語獲得に試行錯誤、手話を学びはじめる。難病や先天性盲ろう児の当事者団体の運営にかかわる。多様な人々が集まる居場所、醸成される文化、その豊かさを子育てを通して知る。現在は盲ろう児相談支援員、手話通訳者、盲ろう通訳介助員、大学非常勤講師などを担う。 -
和田令子
コミュニケーター、調布市聴覚障害者協会 理事手話による絵本の読み聞かせや手話講師として30年すごし、自らの家を手話で語らい世界中から集う場所として、自分たちの言語や身体を起点にかたちづくる。ろう者としての誇りを大切に、手話を日常に、の考えのもとフリースクールやコミュニティ活動を行う。現在は、どこでも・いつでも手話通訳を頼める社会の実現をめざす「プラスヴォイス」にて、情報バリアフリーの推進に取り組んでいる。2024年より東京家政大学兼任講師。 -
郡司明子
群馬大学 共同教育学部 教授専門である美術教育において、身体性を重視した実践・理論研究を展開。小学校教員として日々の暮らしに基づき衣食住をリソースとしたアートの教育実践を行ってきた。近年は、インクルーシブアート教育の観点から学校教育のあり方や社会的な課題に関心を向けている。親子を対象にしたアートワークショップや保育者・教員向け学習会も開催。群馬県特別支援学校文化連盟顧問、教育美術振興会評議員なども務める。
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クロージングセッション わたしの居場所ー未来のあたりまえを考える
だれもが社会に参加できる「居場所」をつくる取り組みは、これまで以上に求められている社会活動です。新しい社会モデルを創出し、それを実現し、いつしかそれが「あたりまえ」になる日を思い描く。障害者の社会参加や学びの場を創出してきた教育者と、人々が協働する場をひらき、居場所をつくる活動を長年継続してきた芸術家の二人が、アートが他分野と協働することで切りひらく「あたりまえの居場所」の未来像を語ります。
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石原保志
筑波技術大学 学長国内唯一の障害者のための大学である筑波技術大学で35年にわたり教鞭を執り、障害者支援に関する研究を行ってきた。障害学生らと交わるなかで、学生たちが充実した人生を歩んでいくために、自ら環境にはたらきかけるテクニックが必要であることを実感。さらに社会モデルとしての障害の軽減が、ライフキャリア(人生の歩み方)において、すべての人々に共通した課題であるという思いに至る。専門は心身障害学(博士)。 -
小山田 徹
芸術家、京都市立芸術大学 学長1987年に京都市立芸術大学美術学部日本画専攻卒業。在学中にパフォーマンスグループ「ダムタイプ」を結成。創設メンバーとして作品を国内外に発信。「共有空間の獲得」をキーワードに、人々が集いかかわる場を生み出し、空間そのものを体験させる独自のアート手法や「共有空間」がもつ新たな可能性を探究。2005年に第2回アサヒビール芸術賞受賞。2010〜24年に京都市立芸術大学美術学部教員。2025年より現職。 -
森 司
アーツカウンシル東京 事業調整課長2009年よりNPOと協働する「東京アートポイント計画」をディレクションし、現在は、東京都・区市町村連携事業を所管する。東京2020公認文化オリンピアード事業「東京キャラバン」「TURN(ターン)」を担当。ろう者と聴者が遭遇する舞台作品《黙るな 動け 呼吸しろ》の事務局長。「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」事業の一環として開催する本会議の企画、統括を務める。女子美術大学特別招聘教授、多摩美術大学非常勤講師。
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会場案内
各会場の案内は下記のリンクをご覧ください。